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『ネットいじめ』 はただの「いじめ」。―終わりなきキャラ戦争と私たち―

ネットいじめ (PHP新書)ネットいじめ (PHP新書)
(2008/07/16)
荻上 チキ

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インターネット関連の議論を中心に活躍する若手批評家、荻上チキの書いたいわゆる中・高校生の「ネットいじめ」に関する本。
どうでもいいけど僕にとって荻上チキって、何の仕事してんのかよく分からない典型的な“文化系ヤクザ”なんだけど、批評家…なのかw

よくあるネットいじめ本が親の視点でネットの恐怖を煽るように書かれるのに対し、この本はよりネットを利用したコミュニケーションに親しんでいる若者の視点で書かれています。
つまり既存のネットいじめ論とは真っ向から反対の立場をとっている。
前半部でネットいじめの温床とされる「学校裏サイト」を検証し、その実態がただの「学校勝手サイト」――つまり放課後の延長戦にすぎないこと、そしてネットいじめのそもそもの原因はリアルな人間関係の問題にあり、後半で若者のストレスフルなコミュニケーションそのものの状況――「キャラ戦争」――へと切り込んでゆく。
つまり「“ネットいじめ”はただの“いじめ”」なのである。


“終わりなきキャラ戦争を生きる”

僕が圧倒的に面白かったのは後半のほうで、正直前半部分はネットをやらない世代に対する説明や誤解の解消のページで、僕らネット世代にはつまんないんだけど、後半では「ネットいじめ」という狭い問題範囲を越えて、そうしたものを含め僕ら若者すべてを覆っている“場の空気”、コミュニケーション論へと展開してゆく。
そのキーワードになるのが「キャラ戦争」だ。
たとえば、僕たちは「リーダー」や「ムードメーカー」など、属する集団によって役割を演じているわけだけど、大事なのは“演じている”のであってそれが僕らの“本質”ではない。したがってそれは従来の「アイデンティティ」ではなく、「キャラ」であるということ。――そして僕たちは時と場に応じて、属する集団に応じて次々にキャラチェンジしてゆくことで、場に適応する。いまの若者の人間観はこうしたモデルのほうが捉えやすい。
そして「キャラ戦争」というのは、クラスや友人など、人間関係の中で“演じている役割”“演じなければならない圧力”として機能してしまっている状況を指している。たとえばリーダーなど、集団のなかでヒエラルキーが高いキャラになるには、コミュニケーションスキルや外見のよさが要求されるし、またムードメイカーにしても、外的要求の度合いが高まれば、よりピエロに近い「いじられキャラ」になってしまう。それでもみんな「いじめられっ子」だけにはなりたくないから、必死にキャラを演じて競争をする。
そのつらい状況をさして荻上は「戦争」と言うわけだ。

この感じは僕も素直に理解できる。
だから「ネットいじめ」というのはそうした「キャラ戦争」がネットの場で展開しただけであって、ネットいじめをなくすにはそもそものキャラ戦争的な僕らのコミュニケーションをどうにかしなければ何の解決にもならない。
ケータイを規制しようがあまり意味がないということだ。

荻上の議論が面白いのは、ここから、そのキャラ戦争の根本的な解決を図ろうとして東浩紀、宮台真司的な視点を導入している点だ。たとえば人間観の「アイデンティティ」→「キャラ」への変化は「島宇宙化(価値観の多様化)」に対応した多極的な芯を持った人間像として表されているし、TPOに応じたキャラの使い分けも「データベース(属性)消費」の図で説明している。また島宇宙においても島宇宙同士でのヒエラルキーがあること(オタクとリア充とか)、ヒエラルキーは提示される場においての「地形補正」があること(学校ではヤンキーが強いとか)、さらに島宇宙による価値観の多様性は保障されたが、そのぶん自明とされる場、ヒエラルキーの高い島宇宙の強制力は高まった(「学校」という島宇宙でのKY圧力)など。
こういった話は若手思想の流行りの部分でもあるし、僕も個人的に好きで、ちょうど似たような内容の記事を前に書いたので貼っとく。↓

Galaxy01_20071212210754.gif
関連記事:島宇宙化


071219-CASE0.jpg
関連記事:アイデンティティの多極モデル


リアルデバイド
関連記事:島宇宙ヒエラルキー



このような構造分析はいじめの根絶とは言わないまでも、かなりの程度現代社会の人間関係のツボを突いているように感じるし、実際この考え方で救われる当事者は多いんじゃないだろうか。
あとは荻上や宮台の言う「クラスを解体すればいじめはなくなる」を現場で実現する実践の問題だという気がする。


出会ってしまう不幸

この本を学校内いじめの本として読むのなら良い本だと思うけど、ほかでもない「ネット」いじめの本としては、1つ重大な欠点があると思う。
それは何といっても「ネットが出会いのメディアである」という側面をこの本が完全に無視している点だ。荻上は「ネットは危険だ」と吹聴する俗流ネット論を意識するあまり、「ネットは危険ではない」と反論することに多くのページを費やしている。だがその結果として、この本がややネット性善説に偏ってしまった感は否めない。また、テーマを「学校裏サイト」ではなく「ネットいじめ」に絞ったために、基本的には学校内のクローズドな人間関係を論じていればこのテーマについては語れてしまう。…しかし、おそらく世間的に語られる「学校裏サイト」のイメージは、「ネットいじめ」ともう1つ「出会い系サイト」の問題が含まれているはずなのだ。この本ではそうした不特定多数との出会いについてはほとんど触れられていない。

僕自身、ネットをやっていることによって望まずとも多くの人に出会っている。ブログもそうだし、ネットゲームもSNSもそう。出会いだらけだ。「出会うはずのない他人と出会ってしまう」というネットの側面、そしてそのことによって、稀に運の悪い少女が事件に巻き込まれてしまう。でもそれはネットという技術がもたらした犯罪なのではなく、それこそ宮台真司がブルセラの時代から指摘しているように、いつの時代にもそういうコミュニケーションの場が(必然的に)あって、そこに吸い寄せられる人が一定数いて、そういう事件がやはり起こってしまう、ということだ。それは単に確率論であって、必ずしもその子の素行が悪いからではない。だから事件に遭ってしまった少女というのは本当に「運が悪かった」としか言いようがないんだけど、だからといってケータイやネットを規制したところで、きっとまたどこかでコミュニケーションの場が求められ、同じような事件が起こる。だからこれは、大局的に見ればどうしようもない問題だと思う。
しかしそれは、子供の親――特に不幸にも事件に巻き込まれてしまった――からすれば堪ったもんじゃないんだろう。たぶん、彼らにとって大局的な話なんていうのはどうでもよくて「とにかく自分の娘・息子に近づく不安要素は片っ端から潰しておきたい」んだと思う。そして、そんな親たちの不安をマスコミが煽り立て、メディアによく登場する「マスコミ御用学者」がその問題意識を強化する――僕にはマスメディアの学校裏サイト報道は、そんな構造に見える。

マスコミ御用学者VSネット御用学者の対立

これに対して荻上チキは、この問題ではマスコミとほぼ真っ向から反対の立場をとっているし、その他多くの問題についてもマスコミと反対の立場をとることが多い気がする。それは単にマスコミの議論が単純で、彼の主張が複雑だということもできるけど、それ以上にいまの時代は「マスコミVSネット」という構図がすごく強い、ひいてはそれがマスメディアの単純化する論法、ネットの複雑化する論法というメディア自体の持つ性質によって「主張自体が影響され著しい齟齬を来たしているんじゃないか」という気さえする。そしてそれを下敷きにした「マスコミ御用学者VSネット御用学者」という対立があって、彼は東や宮台以上に完全なネット派の学者だ。だからすごくネットに甘いのではないか。特に荻上のブログにある『ネットいじめ』についての内藤朝雄との対談記事を読んで、それを強く感じた。

関連Link:ネットいじめと現代社会 ―― 内藤朝雄×荻上チキ特別対談 荻上式BLOG

僕は基本的にテレビよりはネット的な複雑な議論が好きなんだけど、その意味でこの本の荻上の「ネットは安全だよアピール」はちょっとネット的ではないなぁと思う。楽しい部分もあるし、怖い部分もある。それは現実と同じでしょ。


追記
こうした学校内の人間関係や、いじめに関する物語というのは昔から定番だと思うけど、特に最近の作品のなかで、この「キャラ戦争」を強く意識したものを僕は少なくとも3冊知っている。『ネットいじめ』でも取り上げられている『野ブタ。をプロデュース』、そして『しゅごキャラ!』、『AURA 〜魔竜院光牙最後の闘い〜』の3つだ。このうち『AURA』については僕も記事を書いているのでリンクを貼っておきます。

関連記事:メタ・ライトノベル 『AURA~魔竜院光牙最後の闘い~』

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